静岡県静岡市の梅ヶ島温泉で開催された「地域密着型茶摘みと安倍川源流トレッキング」ツアーに参加しました。この企画は、地域づくりをコンセプトに参加者みんなで梅ヶ島温泉ファンになろうというもの。東京農業大学の先生と学生、また、都市農村交流コーディネーターであり、梅が島の「隠れ茶を守る会」代表でもある齋藤雅子さんを中心に、梅が島の魅力と課題を探ります。20代の学生から私の両親を含む高齢者まで世代も幅広く、また、ドイツ人の旅行者や日本に交換留学で来ている学生さんなど国際色もあり、同時通訳のように英語と日本語が交わされる風景も刺激的でした。
さて、私の興味は食と自然と癒し。今回は、はじめて茶摘み&手揉みを体験しました。おいしい緑茶の栽培環境の条件である「寒暖の差が大きい」「日照時間が少ない」「水はけがよい」が整っているという梅が島ですが、標高が高い地域のため一般的な新茶の収穫時期より1カ月ほど遅れます。そのため、通常の一番茶「新茶」という扱いにはならず、品質と価格が見合わないのだそう。高齢化などもあり、耕作放棄茶畑が多いのが現状なのだそうです。
茶摘みは、「一芯二葉」が基本ということで、早速茶畑に入り、新芽を探します。小さな虫や足下からヒルが入ることもあるらしく、完全武装。ズボン裾は靴下に入れて、足下にはヒル除けの塩水を振りかけます。黄浅緑の新芽はすくっと伸びていて美しいのですが、最初は行きつ戻りつ茶畑の中をうろうろ。地元の茶農家さんである「師匠」は動かずどんどん摘んでいきます。お天気に恵まれ、鶯たちの声を聞きながらの茶摘みは集中すればするほど心地よく癒されました。
その後は手揉み作業。電子レンジで蒸したあと、ホットプレートで水分を飛ばしながら、茶葉をもみます。力強く揉み、プレートにひろげて乾燥させるを繰り返す作業、思いのほか時間と根気がいりましたが、ひろがる茶香のなか、みなさんとお話ししつつ楽しみました。摘んで揉んだばかりのお茶をひとつまみ、茶碗に入れて試飲。一煎、二煎、三煎、味と香りの違いを感じて茶葉もいただきます。甘味、苦味、清涼感など、静かに変化する様を舌の上で感じるお茶の飲み方も新鮮でした。
今回の宿泊はペンション「くさぎ里」さん。ご主人、息子さんには大変お世話になりました。温泉もあり、お食事もどれもすべておいしかったです。地元の食材を使い、気取りのない無理のない献立は私好み。味付けもシンプルな薄味のため、食材の味がわかります。やまめ、あまご、スルガエレガント(柑橘)、山椒、安倍川餅、わさび餅、こんにゃく、のびる、柿の葉、紅葉、茶葉、よもぎの葉、たけのこ、猪肉、鹿肉、そば、地いも、朴葉、梅などなど。里山の恵みを堪能させていただきました。ごちそうさまでした。
翌朝は、安倍川源流トレッキングです。水の湧き出る場所へ向かいます。静岡県静岡市と山梨県身延町との県境から1時間半ほどのコースで晴天にも恵まれたので、楽しいお散歩となりました。農大の先生やスタッフの方は山の動植物にも詳しく、木のお話をたくさん聞くことができました。新緑が美しく、深く深く呼吸して体の中に留めておきたいほどおいしい空気、野鳥やカエルの声、静かに流れる川の音。途中、小さな蝉を発見。「エゾハルセミ」というこの時期にいる蝉だそうです。また、水源地近くは、「オオイタヤメイゲツ」など多種類のカエデの巨木が立ち並び、美しい葉影を作っていました。カエデの種類、一度にこんなに見たのははじめてです。季節の花、風の香り、生き物の声、五感を整え癒してくれました。
最後に標高1000mの「天空の茶畑」へ。見学とランチ、お茶の講習などを受けます。遠く駿河湾を望む山の上の茶畑。周囲の山の茶畑も見下ろすことができ、その景色は緑のマチュピチュのよう。お外ごはんが大好きな私としては、ここでのランチも最高でした。1泊2日という限られた時間の中で、たくさんの学び、発見、感動、癒しがありました。もっともっと個人的には掘り下げたい、ゆるゆると楽しみたいこともありますが、またのお楽しみに。齋藤ご夫妻をはじめ、みなさま充実した2日間をありがとうございました。
(伊嶋まどか)
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